大学ボート界の非常識な常識
大学4年間をボートに捧げたさくのすけです。
以前、こんな記事を書きました。
ここでは、ボート競技一般について書きましたが、
今回はさらに踏み込み、マイナースポーツ、ボートの国内事情をつづります。
国内のボート事情
ご存知のとおり、ボートは超マイナースポーツです。
ゆえに競技キャリアのパターンもほとんど限られていて、
- 高校ボート部に所属する高校生
- 大学ボート部に所属する大学生
- 企業クラブに所属する社会人
- 引退しても趣味でクラブに入っているおじさん、おじいちゃん
ほぼこの4つに分類されます。
この記事では特に、2の大学生に絞って書いていきます。
大学ボート界のいろいろ
大学生競技者の内訳
高校で輝かしい成績を残した選手は、大抵
日大→早稲田・明治・仙台→慶應・中央・富山国際・東京経済
くらいの順に強い者からセレクションされていくイメージ。
ゆえに日本大が長らく大学ボート界の絶対王者。
こうした強豪私大は、ほとんどが高校経験者で構成されています。
一方それ以外の大学は、ほとんどが大学から始めた人で構成されます。
高校経験者の割合は体感で1〜2割ほど。
大学ボート界の勢力図
先ほどの話から、上位は強豪私大ばかりの争いかと思いきや、実はそうでもないのです。
絶対王者日本大学の座はなかなか揺るがないものの、一橋、東大、京大、東北大をはじめとする国立大学も各種目表彰台に顔を出すほどの活躍をしています。
そこに各強豪私大が食い込む玉石混交の勢力図。
ゆえにどの国立大学も勧誘は「大学から始めても全国で戦えるよ」が常套句です。
強豪国公立大のいろいろ
お気付きの方もいると思いますが、強い大学はもれなく難関・最難関大です。
この理由は全て、「カネ」に帰着します。
こうした大学の共通点は
- 伝統がある(=100年以上の歴史を持つ部も大きく、OBが多く、熱心)
- 高偏差値(たくさんお金を稼いでいるOBが多い)
ということです。
他の競技と比べて特にボート競技で、金と強さに結びつきがあるのは、いくつか理由があります。
1. ボートは金のかかるスポーツ
ボートは艇本体、オール、あらゆる道具の値段が非常に高いのです。
レースに使うレベルの高級艇はカーボン製の輸入モノゆえに非常に高額で、花形種目の8人乗りは600〜800万程度。
艇は使用とともに劣化していくため、強豪大はこれを数年単位で買い換えます。
小さめの艇でも100〜400万円程し、毎年1〜3杯ほど購入し保有艇を更新していきます。
さらにオールは1本5万(安く聞こえてきます)、メンテ用のパーツも寡占業界なので法外な値段のものばかりです。
2. 合宿設備にも金がかかる
多くの大学ボート部は練習水域の「艇庫」と呼ばれるクラブハウスを所有しています。
そこは艇を保管するだけではなく、寝食し、筋トレなどの設備も整っているところがほとんど。
多くの大学ボート部員はこの「艇庫」で生活し、
大学に行く前の明け方4〜5時から毎朝練習し、限界まで体を追い込みます。
練習後にはマネージャーが練習時間に並行して作ってくれる飯をかき込み、大学へ行き、(爆睡し、)
授業が終わるとまた艇庫へ戻り、練習するといった生活をしています。
ここまで読んだら御察しの通り、長期休暇中は艇庫で「食う・寝る・漕ぐ」の毎日です。
3. だからこそ、財力が活きる
このように、全国のボート部員は生活のほぼ全てをボートに捧げ、
集団生活のなかであれやこれや工夫しながら、限界に挑んでいます。
だからこそ、資金面で潤沢な大学は、
- 充実した設備で効率的に練習できる
- 良い道具が使える
- 金のかかる勧誘イベントで効率よく部員を増やせる
- 多くの部員が生活できる物理的なキャパシティがある
- 人数が多ければ、強い選手が多く集まる、部内競争が激化する
といった感じで、さらに強くなる循環ができ、毎年人が入れ替わっても、強くあり続ける土壌があります。
今日の備忘録
あなたの出身校に、ボート部はありましたか?
練習場所が必ず離れているため、あっても知らなかったという方も多かったのでは。
全国には、ストイックな4年間を過ごす大学生も、ごく少数いるという話でした。